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大阪高等裁判所 平成7年(ネ)236号 判決

主文

一  本件各控訴をいずれも棄却する。

二  平成七年(ネ)第二三六号事件の控訴費用は一審被告らの負担とし、同年(ネ)第三二三号事件の控訴費用は一審原告の負担とする。

理由

一  当裁判所も、一審原告の一審被告春子に対する本訴請求は、原判決認容の限度で正当としてこれを認容し、その余は失当としてこれを棄却し、一審原告の一審被告松夫に対する本訴請求、一審被告らの一審原告に対する反訴請求はいずれも失当としてこれを棄却すべきであると判断するが、その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決理由説示(九枚目裏一行目から二一枚目表末行のとおりであるから、ここに引用する。

1  文中「原告」とあるを「一審原告」、「被告春子」とあるを「一審被告春子」、「被告松夫」とあるを「一審被告松夫」と各訂正する。

2  九枚目裏五行目の「第五三号証、」の次に「第六〇号証(一部)、第六四号証の一、」を付加する。

3  一〇枚目表五行目「第五五号証」の次に「、一審被告松夫の当審における本人尋問の結果(一部)」を付加する。

4  一〇枚目表八行目から九行目にかけて「離婚の話が出るようなこともなく」とあるを「離婚がとりたてて問題となるようなこともなく」と訂正する。

5  一一枚目表九行目から一〇行目にかけて「元来苦痛を伴う検査を嫌がる花子はこれを避け」とあるを「花子は、苦痛を伴う注腸検査を避け」と訂正する。

6  一二枚目表七行目「その旨告げて了解を得た。」とあるを「その旨告げたところ、花子は、積極的ではないものの、これを承諾した。」と訂正する。

7  同表九行目「転院したが、」とあるを「転院した。しかし、花子は、前記のとおり、右転院を承諾したものの、」と訂正する。

8  同裏一行目「原告の意向で」の次に「一審原告が信頼していた」を付加する。

9  一三枚目表六行目「伝えねばならず、」とあるを「伝えねばならないと考えたが、」と訂正する。

10  同裏四行目「解答」とあるを「回答」と訂正する。

11  一四枚目表一行目「看護婦に対し、」の次に「小腸や大腸も腎も」と付加する。

12  同表五行目から六行目にかけて「一〇月五日、原告は、国立京都病院の病室に花子を訪ねると、花子のほかに西脇医師、被告春子がいたが、」とあるを、「一審被告春子は、直接花子に対し、手術と同時に肝カテーテルを設置するように勧めようと考え、一〇月五日、国立京都病院の病室を訪れ、花子に対し、手術と同時に肝カテーテルを設置するように勧めたが、その際、花子が癌であること、癌が肝臓に転移していることを告げた。そこで、花子は、右病室に西脇医師を呼び出して同医師に説明を求めるとともに、手術と同時に肝カテーテルを設置するように要求した。丁度そのころ、一審原告が右病室を訪れたが、」と訂正する。

13  一五枚目表一行目から二行目にかけて「癌告知を行ってしまっていること」とあるを「癌であること、しかも、それが肝臓に転移していることまで告知してしまっていること」と訂正する。

14  同表四行目冒頭から六行目の「る、」までを、「花子が京大病院に移って治療を受けるのは無意味であるから、明日京都へ行き、同人を宇部の実家に連れて行くなどと言い、一審被告春子に代わって電話口に出た一審被告松夫も、一審原告は明らかに誤診をした、」と訂正する。

15  同裏一〇行目末尾に、「なお、京大病院では、丁野医師は、花子に対し、肝臓は前癌状態である旨説明し、一審被告春子に対しても右説明を押し通すことを求めたが、これは、一審被告春子が既に癌の肝転移を告知したことを受け、肝臓に関する権威である丁野医師において、花子に希望を与えるべく、事実と異なる説明を信じ込ませようと図ったものであった。」を付加する。

16  一七枚目表八行目「被告春子から」の次に「肝臓に癌が転移していることを宣告され、」を付加する。

17  同裏二行目「予定であったが、」の次に「体力が衰弱し過ぎていたため、これを」を付加する。

18  同裏四行目「乙第二二号証の一ないし三」の次に「、第六五号証」と付加する。

19  一八枚目表二行目から三行目にかけて「認められ、被告春子の前記供述は、右事実と矛盾する。」とあるを「また、前記認定のとおり、花子も一審原告に対し、一審被告春子が肝臓に癌が転移していることを宣告した旨供述しているのであって(本件全証拠によっても、花子が一審原告に迎合して虚偽の供述をしたものとは認められない。)、一審被告春子の前記供述は、これらの事実と矛盾する。」と訂正する。

20  同裏二行目「実母等」とあるを「実母」と訂正する。

21  同裏九行目から一〇行目にかけて「原告に誤診があったものと極め付け、」とあるを削除する。

22  一九枚目表二行目から三行目にかけて「告知したものであるということができる。」を「告知したのみならず、花子に対し、一審原告に誤診があったと吹き込み、一審原告と離婚し、前記花子が父(一審被告春子の父でもある。)から相続した東京のマンションを一審原告に相続させないために遺言書を作成するように勧めたものということができる。」

23  同表六行目「原告の性格に」とあるを「一審原告の性格が嫌で」と訂正する。

24  同裏一行目「認めるに足りる事情はなく、」から八行目末尾までを、「一審被告春子が、花子の医療に責任を持たず、医学的知識も十分になく、癌告知の当否や一審原告の誤診の有無を判断できる立場になかったにもかかわらず、大腸癌と肝転移を告知したのみならず、花子に対し、一審原告に誤診があったと吹き込み、一審原告と離婚し、前記東京のマンションを一審原告に相続させないために遺言書を作成するように勧めたことは、花子の肉親(妹)として許容される限度を逸脱しており、一審原告や花子の個人生活、夫婦生活に対する違法な干渉であって、不法行為を構成するものというべきである。」と訂正する。

25  二〇枚目表四行目「損害に対しては、」とあるを「損害に対する慰藉料としては、」と訂正する。

26  同裏四行目「前記甲第一七号証」の次に「、当審における一審被告松夫本人尋問の結果」を付加する。

27  同裏九行目「(癌告知)」とあるを削除する。

28  同裏一〇行目「であるとは認められるないもの」とあるを「であると認めるには至らない」と訂正する。

29  二一枚目表一〇行目「被告春子の主張する」の次に「一審原告の平成二年四月二日の言動については、一審原告が一審被告春子に対し拳を振りかざしたことは当事者間に争いがないが、前記乙第二二号証の二のうち第一審原告が張り倒してやると迫ったこと、気違い、精神異常者などと暴言を浴びせた事実に沿う供述部分は直ちに採用することができず、他に右事実を認めるに足りる証拠はなく、本件の事実関係に鑑みると、一審原告が一審被告春子に対し拳を振りかざしたことが不法行為を構成するものと言うことはできない。また、」を付加する。

二  以上のとおりであるから、原判決は相当であって、本件各控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、九三条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中田耕三 裁判官 小田八重子 裁判官 中村也寸志)

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